宝石の真価 - 素人の目に映る、ダイヤモンドの輝き

プロの慢心と素人の眼力
ボクは宝石商として、長年ダイヤモンドをはじめとする様々な宝石を扱ってきた。しかし、独立して数年が経ち、仕事にも慣れてきた頃、自身の慢心を痛感する出来事があった。
それは、連日商品の仕入れが続きいた時のこと。同じ友人から、立て続けにダイヤモンドを見せてほしいと頼まれた。
二つのダイヤモンド、二つの反応
一日目に友人に見せたのは、ごく一般的な品質のダイヤモンドだった。ボク自身も特に際立った特徴のない、標準的な美しい石だと感じていた。
友人は、普段ダイヤモンドを目にする機会がないため、ルースの状態のダイヤモンドを様々な角度から興味深そうに眺め、「きれぇ〜!」と感嘆の声を上げていた。
ところが、翌日、友人に別のダイヤモンドを見せたところ、全く予想外の反応が返ってきた。それは前日と同じカラット数でありながら、最高品質を誇るダイヤモンド。友人はその輝きを見た瞬間、
「なにこれ!?すっごいきれー!!!」
と、目を丸くして叫んだんだ。その興奮ぶりは、前日の反応とは全くの別物で、まるで違う宝石を見ているかのようだった。
プロの盲点、素人の直感
ボクは、二つのダイヤモンドの違いについて、
「え、昨日とそんなに違う?」と尋ねたけど、友人は「全然違う!!!」
と即答。その反応は、ボクにとって衝撃的だった。
「素人の方が見て分かるんや・・・」
毎日ダイヤモンドを見ているプロの目には、品質の違いが当たり前のものとして映り、感動が薄れてしまっていたのかもしれない。しかし、素人の友人は、ダイヤモンド本来の輝きを純粋に感じ取り、その違いを明確に捉えたようです。
この出来事は、ボクにとって大きな教訓となった。プロとして経験を積む中でいつの間にか宝石を見る目が「慣れ」によって曇ってしまっていたのかもしれない。宝石の美しさは、専門的な知識や経験だけではなく、純粋な感動や驚きといった、人間の感性によっても大きく左右されることを、改めて認識させられました。
初心忘るべからず、宝石の輝きを求めて
日々の業務に追われる中で、宝石に対する感動や驚きを忘れかけていたボクにとって、この出来事は初心を思い出すきっかけとなった。プロとして常に宝石の美しさを追求し、お客様に感動を与えられる存在でありたいと、改めて強く感じた。
最近では、キュービックジルコニアを目にする機会も増え、本物のダイヤモンドの輝きを改めて実感することが多くなった。しかし、あの時友人が見せてくれた純粋な感動を忘れずに、これからも宝石の魅力を伝えていきたい。